全部君のせいだ
君のせいで僕はおかしくなったんだ!
だってその人は優しすぎたから。
病的なほどに優しすぎたから、わたしはその人からあるものすべてを巻き上げた。
わたしも生きるのに必死だった。何も持たないわたしが生きていくには、誰かに寄生し、施してもらう他にない。
けれど、彼は破滅した。借金を背負って、可哀想なわたしより〝可哀想〟な人になってしまった。
それならもういらない。わたしはわたしを生かすことのできる人を必要としている。お金があって、わたしを守ってくれる人。なればこそ、わたしよりも惨めで哀れな人に用はないのだ。
だからわたしは彼を捨てた。彼の助けなどいらないと突き放して捨てて、わたしを助けてくれると言った別の人の手に縋った。
──それが、彼を狂わせたのだろうか。
「……君のせいだ」
大きな手がわたしの襟を握りしめ、壁に押し付けた。ぎゅう、と締まる気道にかふりと息苦しさから漏れた声が出る。彼は俯いたまま、絞り出すような声音で叫んだ。
「君のせいで僕の人生滅茶苦茶だ! 僕は君が、君に、君があんなにも僕を必要として、縋って、だから僕は君を助けてあげたくて、あんなに僕を好きだと言ったくせに、なのに君は僕を捨てて、他の男の所に行って、僕は君が憎くて、許せなくて、なのに……」
「か、かーう"ぇ、い、いだ……ぐるじいッ」
「君が憎くて仕方がない! どうにかしてやりたいんだ! 後悔させてやりたいよ、僕がおかしくなったように君もおかしくしてやりたい。でも、でも駄目なんだ、僕は君が好きで、君がどうしようもなく好きで、傷付けたくないとも思う。幸せにしてやりたい、僕が君を幸せに……」
「君のせいだ……全部君のせいだ、こんな感情知らなかった、知りたくなかった、僕は、僕は……」
「……君が僕から離れなければよかったんだ」
畳む
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