ワァ!転生した!
これが噂の悪役令嬢転生ですか!!!!?!?!!????? その日、ディルックは朝から憂鬱だった。
何故なら、婚約者と顔合わせをする日であったからである。
婚約者、と一言でいっても、それはディルック自ら望んで結んだ確約ではない。口先ばかりは達者な貴族に半ば無理矢理結ばれた口約束から生じたものであった。ディルックも当然それをやんわりと拒絶はしたし、なかなか相手が諦めてはくれないので最終手段として想う相手がいると虚言を吐いて躱そうとはしたが、しかしそういった言葉が全く通じない話の分からない相手もいる。
こうなれば直接断るしかないと諦めたディルックは、結局相手貴族の娘と一度面会することにしたというわけである。
モンドにいる貴族、というものは中々面倒である。
最も、ラグヴィンドの血を継ぐディルックがそれを言えた訳ではないが、しかし貴族と平民といった身分制から開放されたこのモンドでは、「貴族」という身分に拘る相手はとにかく面倒であった。
なにせ、プライドが高い。その上、地位や権力に執着し、平民を見下し自分こそが優れているのだと思い込む性質がある。悲しいことに、ディルックが婚約を交わした貴族の家はそういった性分の者が多くいる家であったので、彼は面倒事に時間を割かなければならないその億劫さに憂鬱だったのである。
だからこそ、ディルックはこの婚約には乗り気ではなかった。
例えその婚約相手がどんなに美しくとも、どんなに優れた能力を持っていたとしても、その彼女に纏わる幾つもの問題が面倒であったが故に、必ず断るつもりでいたのである。
「フン……貴方がわたくしの婚約者……」
まるで値踏みするかのようにじろじろと上から下まで眺める視線。自分も貴族の身分ではあるが、こうもあからさまでは思わず溜め息も零れてしまうというものだ。
──ああ、やはり彼女もそうなのか。分かっていたことではあったが、想像していた通りの相手であったことに落胆する。ディルックが婚約の破棄をしようと口を開いた時、女が意気揚々と声を上げた。
──ディルックはこの時知らなかった。彼が顔を合わせた女が、ただの普通の貴族の女ではないことを。
「いいですわ! 分かりましたわ! これはつまり〝結婚はしてやるが僕には愛する人がいるのでお前と愛し合うことはない〟展開ですのね! おーっほっほっほ! 大歓迎ですわ! NAISEIやってやりますわ~!」
──女は、かつてなろうで悪役令嬢ものを読み漁っていた転生者だった。畳む
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